バイオ実験のコツ

HEK293細胞

HEK293細胞とHEK293T細胞との違いは?

更新日:2020年7月10日

細胞を使った研究をされている方なら、おそらくHEK293細胞の名前を聞いたことがあると思います。 HEK293細胞は、世界中で一般的に使用されている細胞株のひとつです。

しかし、そもそもHEK293細胞とは何でしょうか?
293とはどういう意味でしょうか?
なぜ HEK293細胞を使用した研究が多いのでしょうか?
HEK293細胞とHEK293Tとはどう違うのでしょうか?

本記事はこれら疑問に答えています。

ちなみにHEK293細胞の読み方はヘックニーキューサン細胞です。

HEK293細胞とは?

HEK293細胞とは?

HEK293細胞は、1970年代初頭にオランダの生物学者Alex Van der Ebによって分離および増殖されたヒト胚性腎臓細胞です。彼の研究室のポスドクであったFrank Grahamが、 ヒト胚性腎臓細胞へアデノウイルス5(Ad5)DNAをトランスフェクションしました。

それが彼の293回目の実験だったため、細胞の起源であるヒト胚性腎臓細胞 (Human Embryonic Kidney cell)の頭文字であるHEKと合わせてHEK293と名付けられました。これがHEK293細胞の名前の由来です。

アデノウイルス遺伝子をHEK細胞のゲノムに組み込むことで、組換えタンパク質を効率的に産生できるようになりました。

HEK293細胞は種類が多い

HEK293T

HEK293T細胞は、 HEK293細胞にSV40 Large T抗原を発現させたものです。HEK293T細胞の”T”は、T抗原を意味します 。これにより、 HEK293T細胞では、SV40複製起点を持つプラスミドベクターを使えるようになり、大量のタンパク質を生産できるようになりました。

HEK293S

HEK293S細胞は、改変E-MEM(modified minimum Eagle’s medium)に純化させたHEK293細胞です。類似した細胞にHEK293S11があります。

HEK293F

HEK293F細胞は、市販の培地に純化させたHEK293 細胞です。

HEK293FT

HEK293FTは、HEK293T細胞からクローン化された高増殖変異体です。市販の培地に純化させてあります。HEK293FT細胞は、HEK293T細胞と同様に、SV40ラージT抗原を安定的に発現しています。SV40 ラージT抗原の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって制御されています。

HEK293FTM

HEK293FTM細胞は、FRT サイトを含むプラスミドと TetR 発現プラスミドを安定的に発現させたHEK293細胞です。タンパク質-タンパク質相互作用研究のために樹立されました。

HEK293SG

HEK293SG細胞は、エチルメタンスルホン(EMS)で変異を誘導したHEK293Sです。その中からリシン毒素耐性を持つクローンが選抜され、HEK293SG細胞となりました。HEK293SG細胞は、MGAT1遺伝子によってコードされるN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI活性(N-acetylglucosaminyltransferase I activity)が欠損しており、発現するタンパク質はMan5GlcNAc2 N-glycanに優勢的に修飾されます。
N-グリコシル化タンパク質の産生に利用されています。

HEK293SGGD

HEK293SGGD細胞は、HEK293SG Glyco Delete細胞株の略であり、HEK293SG細胞へfungus Trichoderma reesei由来のエンドグリコシダーゼであるendoTのゴルジ体標的型の発現プラスミドをトランスフェクションして得られた細胞株です。HEK293SGGDは主に糖タンパク質の研究に使用されています。

HEK293H

HEK293H細胞は、接着性を高めたHEK293細胞です。HEK293細胞を限界希釈法でクローン化し、選抜されました。プラークアッセイに使用されます。

HEK293E

HEK293E細胞は、Epstein-Barr virus(EBV)nuclear antigen 1(EBNA-1)を発現するHEK293細胞株です。origin of plasmid replication(oriP)を持つベクターを使用することで、タンパク質の大量発現が可能になります。
ラージスケールのタンパク質発現に使用されます。

HEK293MSR

HEK293MSR 細胞は、遺伝子組み換えによってhuman macrophage scavenger receptor(MSR)を発現させたHEK293細胞です。非常に強い接着性を示します。

HEK293細胞のここがすごい

HEK293細胞のここがすごい

HEK293細胞には多くの利点があります。

  1. 培養中の生存率が高い
  2. 半接着性
  3. 約36時間で分裂
  4. 一過性発現と安定発現の両方に利用できる
  5. 遺伝子導入されやすい

これら利点から、ヒト初の細胞株であるHeLaに次いで2番目に広く使用されている細胞株です。 HEK293細胞は、がん研究、ワクチン開発、タンパク質生産、シグナル伝達およびタンパク質相互作用の研究、薬物検査などに使用されています。

HEK293細胞の培養

HEK293細胞の培養条件はシンプルです。37°Cで5%CO2のインキュベーター内で、ウシ胎児血清(FBS)を添加したD-MEMなどの高グルコース培地を使って培養します。 培地には、細菌感染を防ぐために、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミンなどの抗生物質も添加します。

HEK293細胞は急速に分裂するため、数日ごとに継代することができます(私たちの研究室では、通常月曜日、水曜日、金曜日に継代します)。一般的な細胞株と同様に、細胞が対数増殖期のときに継代します。

問題点

HEK293細胞は、性質が安定しており、結果の再現性も高いです。しかし、継代を繰り返すと、次第に細胞の増殖率と翻訳効率が変化し、実験の再現性が低下します。20回以上継代されている細胞株は危険です。例えば、あるラボでは13継代を超える細胞株は使用されません。

HEK293細胞株は、研究において非常に有用であり、様々な研究分野で様々なアプリケーションに使用できます。ヒト型の組換えタンパク質を生産できる細胞株が必要な場合、または培養の手間がかからない細胞株を探している場合、HEK293細胞をおすすめします。

参考文献

 

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