Immuno-PCR(イムノPCR)とは? -高感度免疫検出法-

タンパク質を検出する方法として、ウエスタンブロット(Western Blot)、フローサイトメトリー(Flow Cytometry)、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)などが長年使用されてきました。 Immuno-PCRは、ELISAとポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を組み合わせた抗原検出方法で、高感度にターゲットタンパク質検出できます。
順を追って原理を説明します。

ELISA

ELISAは、分子をマイクロプレートウェルに固定化するアッセイです。 大きく分けると、ELISAには3つのタイプがあります。

1) antigen-down ELISA(直接法)
 抗原を直接マイクロプレートウェルに固相化します。
2)サンドイッチELISA
 抗原捕捉用抗体をマイクロプレートウェルに固相化し、別の抗体で検出します。
3)競合ELISA
 抗原が小さく、同時に2つの異なる抗原エピトープを持つ抗体が結合できない場合に有用です。 マイクロプレートウェルに抗体を固相化し、サンプルと標識した抗原をウェルに添加します。サンプル中に抗原が多ければ、標識抗原が固相化抗体に結合できず、吸光度は低くなります。反対に、サンプル中に抗原がすくなければ、標識抗原が固相化抗体にたくさん結合でき、吸光度は高くなります。

PCR

PCRは、DNAの特定の領域を増幅するために使用される手法であり、非常に少量のDNAサンプルにも使用できます。

1)dsDNAの熱誘導変性により2つの相補鎖を分離します。
2)温度を下げてプライマーを結合させます。
3)DNAポリメラーゼを使用してターゲットDNA配列の相補的コピーを産生します。

従来のPCRでは、増幅されたDNAはゲルで泳動され、エチジウムブロマイドで染色されます。
定量PCR(qPCR)としても知られるリアルタイムPCR(Real-time PCR)は、PCR産物量を蛍光色素で経時的に測定します。感度が高く、広いダイナミックレンジを得られます。

Immuno-PCR:ELISAとPCRの組み合合わせ

Immuno-PCR:ELISAとPCRの組み合合わせ

抗体があればELISAでターゲットタンパク質を検出できますが、微量タンパク質を検出しようとすると、感度が足りない場合があります。 一方、RT-PCRは、指数関数的にシグナルを増幅することができますが、抗体を使うわけではないため、タンパク質を直接検出することはできません。

Immuno-PCRは、「抗体-オリゴヌクレオチド結合分子」を使い、ELISAとRT-PCRを組み合わせるアッセイです。簡単に言うと、 Immuno-PCRは、ELISAの検出抗体を「抗体-オリゴヌクレオチド結合分子」に置き換えたものと考えてください。

Immuno-PCR
画像出典:Emma Easthope,Immuno-PCR: A Highly Sensitive Method of Immunodetection


例えば、典型的なサンドイッチELISAでは、ターゲットタンパク質に特異的な抗体がマイクロプレートウェルの表面に固相化されています。まず、 マイクロプレートウェル にサンプルを添加し、固相化抗体に結合しないタンパク質を洗浄して除去します。次に、一次抗体を反応させ、サンプルに結合していない抗体を洗浄して除去します。さらに、一次抗体に対する二次抗体を反応させます。

サンドイッチELISAを免疫PCRアッセイに変換するには、標識二次抗体を「抗体-オリゴヌクレオチド結合分子」に置き換えます。RT-PCRを行うことで、 オリゴヌクレオチド を増幅および検出できます。

ELISAからImmuno-PCRアッセイへの変換

Immuno-PCRの系を構築する過程は一般的なELISAと同じです。
バックグラウンドシグナルを最小限に抑えながら、ターゲットシグナルを最大化するように最適化する必要があります。 プレートコーティングの方法、洗浄バッファー、ブロッキング溶液、インキュベーションの長さを検討し、バックグラウンドとシグナルを最適化していきます。なお、ELISAと同じく、 Immuno-PCR の性能は使用する抗体の性能に大きく依存します。

従来のELISAからImmuno-PCRへ置き換えられれば、高感度な検出が可能になり、サンプル中の微量タンパク質を検出できるようになります。よい系を組めれば、 ピコグラム-フェムトグラムレベルのターゲットタンパク質を検出できます。

抗体-オリゴヌクレオチド結合分子の作製

抗体-オリゴヌクレオチド結合分子は、従来の結合方法では大量の抗体が必要であり、精製ステップで抗体のロスが発生し、コストが高くなることがありました。 しかし、現在は使いやすい抗体-オリゴヌクレオチド結合キットが市販されるようになったため、Immuno-PCRはより行いやすくなりました。

Immuno-PCRに切り替える理由

Immuno-PCRに切り替える理由

繰り返しになりますが、Immuno-PCRは、ELISAよりも大幅に高い感度を得られます。 感度が上がれば、貴重なサンプルを節約できます。また、夾雑物の多いサンプル中の微量タンパク質の検出も可能になります。結果の再現性もあります。

当然のことながらImmuno-PCRは人気が高まっています。ELISAで使用できる抗体があればできます。感度にお困りの場合はぜひ試してみてください。


本内容は、BiteSizeBioに掲載されたEmma Easthope著,”Immuno-PCR: A Highly Sensitive Method of Immunodetection”, (参考文献参照)を翻訳し、加筆修正したものです。

参考文献

Emma Easthope,”Immuno-PCR: A Highly Sensitive Method of Immunodetection”, BiteSizeBio.

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