ノンコーディングRNAの種類と機能:Non-Coding;ncRNA

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ノンコーディングRNAとは?

ノンコーディングRNA(non-coding RNA:ncRNA)は、タンパク質に翻訳されないRNAを指し、かつては意味のないジャンクと考えられていた。ジャンクと考えられていた理由は、ノンコーディングRNAがタンパク質に翻訳されないため、DNA→mRNA→タンパク質という生物学のセントラルドグマに直接的に関与していないからである。

しかし、ノンコーディングRNAは、 あらゆる真核生物の存在し、タンパク質に翻訳されないからと言って生物学的な意味がないとは言えない。そもそも、真核生物のゲノムの90パーセントは転写されるが、タンパク質に翻訳されるのはわずか1〜2パーセントだけである。

ノンコーディングRNAは、エピジェネティクス分野においてよく研究されており、他のRNA活性の調節、タンパク質の翻訳後修飾に大きく関与していることがわかっている。

ノンコーディングRNAの歴史

ノンコーディングRNAは、1980年代に最初に発見され、大腸菌のmicF RNAが、独自のプロモーターを持ち、環境ストレスに応答して翻訳を抑制する小さなノンコーディングRNAをコードする遺伝子であることが示された。以後、多くのノンコーディングRNAが発見され、それらがすべてのRNAの60%を占めることがわかり、遺伝子発現の調節におけるノンコーディングRNAの重要性が報告され続けている。

現在、ノンコーディングRNAは非常に盛んな研究分野である。しかし、これらの分子の理解は向上したが、タンパク質構造と分子がどのように結びついているのか正確には理解できていない。

ノンコーディングRNAは、クロマチン構造/エピジェネティックメモリ、転写、RNAスプライシング、編集、翻訳、ターンオーバーなど、生理学および発達におけるさまざまなレベルの遺伝子発現を制御する隠れた内部シグナルである。また、ノンコーディングRNAは、発生、代謝、神経系の機能と知能、そしてもちろん疾患に関与する可能性も高い。

ノンコーディングRNAの種類

発見されたノンコーディングRNAには様々なものがあり、多様な調節機能を担っている。

■microRNA(miRNA)
20-24ヌクレオチドの一本鎖RNAであり、 RNA誘導サイレンシング複合体(RNA induced silencing complexes;RISC)に取り込まれて機能する。microRNAは、mRNAの転写産物の相補配列と部分的に結合し、mRNAの翻訳を阻害することでターゲットのタンパク質発現を抑制する。

■siRNA
21–25bpの二本鎖RNAである。 元々は長鎖のRNAであるが、細胞質内のDicer(RNase)によって短鎖となる。microRNAと同様、 RNA誘導サイレンシング複合体(RNA induced silencing complexes;RISC)に取り込まれて機能する。 最終的には、RISC内でヘリカーゼによって1本鎖RNAとなる。
siRNAは、mRNAの転写産物の相補配列と全体が結合し、mRNAを分解させるよう誘導することで、タンパク質の遺伝子発現を抑制する。

<microRNAとsiRNAの機能的違い>
microRNAは、mRNAの配列と6-8ヌクレオチドが相補的であれば結合できる。一方、siRNAは、mRNAの配列が完全に相補的でなければ結合しない。
どちらもmRNAに結合し、タンパク質の発現を抑制する機能は同じであるが、上記の結合の違いから、microRNAは1種類で複数のmRNAの転写を阻害し、siRNAはターゲット特異的にmRNAの転写を阻害する。

■piwi-interacting RNA(piwiRNA;piRNA)
24~31ヌクレオチドの1本鎖RNAである。piwiファミリーのタンパク質と相互作用し、生殖細胞系および体細胞のトランスポゾンの発現を抑制する。 piRNAと結合したPiwiタンパク質は,piRNAと相補的配列をもつトランスポゾンRNAを認識し、切断する。

■long noncoding RNA(lncRNA)
long noncoding RNAは、200ヌクレオチドを超え、ノンコーディングRNAの大部分を占めている。 long noncoding RNAは、転写後にスプライシング、アデニル化などの方法で修飾される。一部のlong noncoding RNAは、ヒストンの発現の変更に関与している。エピジェネティックな遺伝子サイレンシングを制御し、転移およびがん細胞の血管新生に関与する遺伝子を調節することにより腫瘍の発達に影響を及ぼす。

■その他
small cytoplasmic RNA、snRNA(small nuclear RNA)、snoRNA(small nucleolar RNA)がある。

参考文献

Delihas, N. (2015)Discovery and characterization of the first non-coding RNA that regulates gene expression, micF RNA: A historical perspective, World J Biol Chem, 26, 6(4): 272–280.

Mattick, J., Makunin, I.V. (2006)Non-coding RNA, Human Molecular Genetics, 15, R17–R29.

Natsuko, I., Yukihide, T.(2018)The biogenesis and function of PIWI-interacting RNAs, 領域融合レビュー, 7.

Thermo Fisher(2018)The Importance of Non-coding RNAs, BiteSizeBio.

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