バイオ実験のコツ

RNase対策:オートクレーブとDEPC処理の効果

RNase(RNA分解酵素)は、ごく微量で高い活性を示し、ヒトの手、ほこり、空気中に存在しているため、コンタミネーションに注意が必要である。

本内容は、Thermo Fisher Scintificが公開する“RNase and DEPC Treatment: Fact or Laboratory Myth”をベースによくあるRNaseに関する疑問を簡潔にまとめたものである。詳しい調査実験の条件は原著を参照してほしい。

また、本文中に出てくるDEPC(Diethylpyrocarbonate)は発がん性が疑われている物質である。市販の DEPC処理水は、DEPCでRNaseを不活化した後、オートクレーブでDEPCを分解しているものがほとんどであるはずだが、取り扱いには注意が必要である。


RNaseはオートクレーブのみで不活化できる?

A. 多量のRNaseが混入している場合、オートクレーブのみではRNaseを不活化できない。

以下は、RNAとRNase Aを混合したサンプルを、オートクレーブ処理 (+/-)し、電気泳動でバンドの分解を調べた結果である。
オートクレーブしない場合、1ng/mLのRNAは、100pg/mL以上のRNase Aが含まれると電気泳動でわかるレベルで分解される。
一方、オートクレーブした場合、1ng/mLのRNAは100ng/mLのRNase Aが含まれていてもほぼ分解されない。しかし、1ug/mLのRNase Aが含まれる場合はオートクレーブしてもRNAは分解される。

高濃度のRNaseがコンタミすることは少ないと思われるものの、DEPCを使ってRNaseを不活化することが望ましい。

DEPCはオートクレーブで不活化(分解)できる?

A. できる。
理論上、0.1%のDEPC水は15分間/Lのオートクレーブで不活化される。DEPCは分解すると二酸化炭素とエタノールになる。

DEPCはオートクレーブで不活化すると無臭になる?

A. DEPCを不活化できていても匂いがする場合はある。
DEPCが分解しても、エタノールあるいは揮発性エステルの甘い匂いが残ることがある。エタノールはDEPCの加水分解物であり、 揮発性エステルはエタノールと微量にコンタミしていたカルボン酸の反応生成物である。

Tris(トリス)はDEPCのRNase不活化効果を低下させる?

A. 低下させる。
一般的な緩衝液であるTris、HEPES、MOPS、PBSのDEPCの阻害効果を調べた結果、 Tris、HEPES、MOPS、PBSの順でDEPCのRNase不活化効果は低下した。 Trisは顕著にDEPCの活性を阻害した。

市販のRNase除去(不活化)スプレーの中身はDEPC?

A. DEPCではない。
少なくとも、RNase AWAY(Thermo Fisher Scientific)RNase Knockout(富士フイルム和光純薬)RNase Quiet(ナカライテスク)においては、DEPCを含んでいないことがパンフレットやウェブに明記されている。

参考文献

Thermo Fisher Scintific, “RNase and DEPC Treatment: Fact or Laboratory Myth”, 閲覧日:2020年2月27日.

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