新型コロナウイルス(SARS-CoV-2, COVID-19パンデミックの原因となったウイルス)の蔓延を防ぐため、大学や企業は従業員や研究者に在宅で働くことを求めている。多くの人にとって、在宅で仕事をしても仕事内容はあまり変わらないが、バイオ系などウェットラボの研究者は在宅でどのように研究を進めればよいだろうか。
研究室での実験は一旦保留にせざるを得ないが、実験以外の仕事をするための機会になるかもしれない(そう思うしかない)。
そこで、在宅で研究を進めるための10のアイデアと13のツールを以下にまとめた。すでに実行されている方も多いだろうが、参考になれば幸いである。
論文を書く
もし論文をまとめるのに十分なデータがあるならば、論文を書き始められる。しかし、まだデータが揃っていない、もしくはこれからデータを取る段階であっても、論文の構成だけでもを作り始めてみてはいかがだろうか。
実験を始める前に論文の全体像を考えることで、事前に論理構成の穴を見つけられたり、必要な実験データを把握しておくことができる。
自分がやろうとしている研究の再確認になるだけでなく、1枚でいいので簡単にまとめてラボのボスに渡しておけば、ボスもあなたがどのような論文を書こうとしているかを知ることができ、安心するだろう。
論文を読む
自宅から論文にアクセスできるのであれば、自身の研究の参考になりそうな論文を読むことができる。引用したい論文、これからの行う実験のベースになりそうな論文、詳細なプロトコルが記載された論文、解析手法を真似したい論文など整理してまとめよう(次の「参考文献を整理するを参照」)。
自宅で論文にアクセスできないのであれば、オープンアクセスジャーナルで調べよう。今やオープンアクセスジャーナルはたくさんある。
参考文献を整理する
優れた研究者は参考文献が整理されている。こういう文献を知っているかと聞くと、すぐにこれが参考になると教えてくれる。
論文を整理しておかないと、いざその文献を参照したいときに、あいまいな記憶を頼りに探すことになる。何かを探すという行為は思っている以上に時間がかかり、ストレスを感じる。
実験を行えない今、参考文献を整理してみてはいかがだろうか。文献を整理するツールはたくさんがあるが、4つの文献管理ツールを紹介しておく。
コストダウンを考える
もしあなたがラボの予算を管理する立場なら、日々の試薬や消耗品器材の出費に頭を痛めているはずである。今の時間を使ってもっと安く入手できる試薬や器材がないか調べてみよう。少ししか安くならなかったとしても、コストダウン可能な試薬・器材が複数あれば、積み重ねで期待以上に出費を抑えられるかもしれない。
もしあなたが学生などでラボ予算を知る立場でないとしても、切り替え可能な安そうな試薬を調べ、ボスに提案してあげよう。研究室のボスは、あなたが思っている以上にラボ予算のやりくりに苦労している。
描画ツールを使いこなす
他の研究者の論文や発表資料に触れたとき、図がわかりやすいと思ったことがあるだろう。シグナル伝達経路やタンパク質の相互作用など、複雑なモデルを言葉だけで伝えることは難しい。
描画ツールは初めは使いこなせずもどかしいが、使わなければ上達することもない。
以下によく使用される描画ツールを紹介する。独学でも十分使えるようになる。 個人的な見解だが、このようなツールは長期間少しずつ学ぶよりも、短期集中でやる方がよい。
発表の練習をする
学会のポスター発表であったり、ラボのゼミであったり、研究者は発表をする機会が多い。自宅で自身の研究を発表する練習をしてみよう。
もし一人での発表練習が嫌ならば、ウェブ会議ツールを使って研究仲間と発表し合うのもいいだろう。
ウェブ会議ツールを3種類紹介する。
コーディングを学ぶ
データ解析を効率化するならコーディングの学習をお勧めする。繰り返し同じデータ処理をする場合や一括で大量のデータ加工が必要な場合、自分用のデータ処理コードを用意しておくことで、解析時間を削減できる。
コードを学ぶのに役立つ無料のプラットフォームを紹介しておく。
キャリアプランを考える
日々の実験に追われていると、将来の自分のことを考える時間はなかなかない。もし将来の自分が取り得る選択肢や将来ありたい自分を考えたことがなければ、これを機にじっくり考えてみよう。
アカデミアの研究者やその志望者は、任期付き雇用が多くキャリアプランを立てにくいが、どのような選択肢があるか調べ、自分が将来どこで何をしたいのかを整理しよう。
すでに将来像が決まっているのであれば、そこにたどり着くための計画を立てたり、それに必要な知識や経験が今の自分にあるか、ないならどのようにそれらを手に入れるか考えよう。
研究のことを考えるのをやめる
実験ができずにストレスを感じているより、思い切って別のことをしてみてはいかがだろうか。 意外と研究以外のことを考えているときに研究のアイデアが 思い浮かぶこともある。
研究とは関係のない本を読んでみたり、部屋の模様替えをしてみたり、動画を観たりしてゆっくりするのもいいだろう。
人脈をつくる
むやにやたらに人脈をつくる必要はないが、人脈が後々あなたを助けることもある。共同研究に発展したり、将来の研究仲間になるかもしれない。普段ならラボのボスや先輩の伝手で人脈が増えるが、これを機に意図的に人脈を増やしてみよう。
例えば、思い切って気になる論文の著者たちへメールを送ってもいいだろう。普段なら著者たちが忙しくメールが返って来なくとも、今なら返ってくるかもしれない。彼らも自分の論文に興味を持ってもらえるのは嬉しいはずである。
参考文献
Laura Grassie(2020)10 Ideas for Researchers Working from Home, BiteSizeBio.
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