Real-Time(リアルタイム)PCRの特徴は、ターゲット遺伝子の増幅と蛍光シグナルを定量可能な方法で関連付けることである。その手法は、蛍光インターカレート色素と蛍光オリゴヌクレオチドプローブの2つに大別される。それでは、インターカレート色素法とプローブ法それぞれの長所と短所は何だろうか?
インターカレート色素(例:SYBR Green)
PCRでアニーリングした2本鎖DNAに対し、蛍光色素がインターカレートする。 インターカレート色素は、 通常は弱い蛍光は発しているが、2本鎖DNAに結合すると強い蛍光を発するようになる。PCRが進むに連れ、 DNAが増幅してインターカレートする蛍光色素が増えることで、リアルタイムにPCR増幅を蛍光強度で測定できる。
長所
・ターゲット遺伝子ごとにプローブを設計、合成しなくてよいため手間と費用を抑えられる。
短所
・プローブ法よりも特異性は高くない。インターカレート色素は、2本鎖DNAであればプライマーダイマーや非特異的増幅産物であっても検出される。なお、これの対策としては解離曲線解析がある。
プローブ法(例:TaqMan)
蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(短いDNA分子)を使用する方法である。
プローブは通常、オリゴヌクレオチドの5’末端と3’末端の両方に標識する。プローブの5’末端に蛍光レポーター(FAMなど)を、プローブの3’末端にクエンチャー(TAMRAなど)を修飾する。クエンチャーは蛍光レポーターの発光を抑制する。
PCRのアニーリングステップにおいて、プローブは鋳型DNAにハイブリダイズするが、クエンチャーがあるため、励起光を照射しても蛍光レポーターは強い蛍光を発しない。
PCRの伸長反応ステップにおいて、DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性(5’→3’)によって、ハイブリダイズしていたプローブは分解される。分解されてクエンチャーと離れた蛍光レポーターは蛍光を発するようになる。
プローブの配列はプライマーのターゲット配列よりも下流の配列に相補的になるよう設計する。
長所
・ プライマーとプローブの二重特異性により 、インターカレート法よりも特異性の高い検出が可能。
・解離曲線解析が不要。
短所
・ターゲット配列ごとにプローブの設計および合成が必要。
参考文献
Merck, Quantitative PCR and Digital PCR Detection Methods.
Utibe Bickham-Wright(2017)Intercalating Dyes or Fluorescent Probes For RT-qPCR?.
タカラバイオ, リアルタイムPCRの原理.
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