バイオ実験のコツ

SDS-PAGEの仕組み:原理と成分の役割(電荷、分子量)

SDS-PAGEは、Sodium Dodecyl Sulfate – Poly-Acrylamide Gel Electrophoresis(ドデシル硫酸ナトリウム – ポリアクリルアミドゲル電気泳動)の略であり、分子量(分子の大きさ)に基づいてタンパク質を分離する手法のひとつです。SDS-PAGE自体は広く普及しており、ほぼ毎日SDS-PAGEを行っているラボも少なくないでしょう。

ここでは、SDS-PAGEの原理と主要成分の意味を紹介します。

電気泳動におけるタンパク質の移動速度

ある電場中でのタンパク質の移動速度は、電場の強さ、タンパク質の電荷、タンパク質の分子の大きさ(分子量と分子半径)よって決まります。

■電場
電気泳動のときに設定する電流、電圧で実験者がコントロールできます。

■電荷
タンパク質のアミノ酸組成によって電荷は決まります。タンパク質の正と負のアミノ酸の総和です。

■分子の大きさ(分子半径)
タンパク質の形状(立体構造)とアミノ酸の数(分子量)で決まります。同じアミノ酸の数を持つタンパク質であっても、タンパク質の形状(立体構造)によって分子の大きさ(分子半径)は変わります。

SDS-PAGEが解決する電気泳動の問題

冒頭で述べたように、SDS-PAGEは分子量(分子の大きさ)に基づいてタンパク質を分離する手法です。その方法を簡潔に述べると、タンパク質を陽極方向に移動させ、大きな分子量を持つタンパク質ほど泳動速度が遅れる結果、タンパク質を大きさ(分子量)別に分けられるというものです。

しかし、単にタンパク質をある電場に置いただけでは分子量ごとに移動しません。これには2つの理由があります。

タンパク質の電荷は様々である

ひとつめの理由はタンパク質固有の電荷です。

タンパク質の電荷はアミノ酸が持つ正負の総和で決まります。正の電荷を持つタンパク質もあれば、負の電荷を持つタンパク質もあります。一般的な電気泳動は、タンパク質を陽極方向へ移動させます。そのため、負の電荷を持つタンパク質であれば陽極方向へ移動しますが、正の電荷を持つタンパク質は陽極方向へ移動しません。

タンパク質には形がある

ふたつめの理由は、タンパク質固有の形状(立体構造)です。

タンパク質の移動速度は、タンパク質の分子量と形状(立体構造)によって決まります。電気泳動はタンパク質の分子量別に分離する手法なので、分子量によって移動速度が変わるのは問題ありません。しかし、タンパク質の形状(立体構造)によって移動速度が変わるのは困ります。分子量は大きいのに折りたたまれコンパクトなタンパク質は、移動速度が速く、実際の分子量より小さいと判断してしまいます。

SDS-PAGEは、上記2つの問題を解決する電気泳動手法です。

解決方法

タンパク質の電荷を負にする

SDS-PAGE(Sodium Dodecyl Sulfate – Poly-Acrylamide Gel Electrophoresis(ドデシル硫酸ナトリウム – ポリアクリルアミドゲル電気泳動)は、その名の通り、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を使う電気泳動です。

SDSは、様々な電荷をもつタンパク質に負の電荷を持たせます。SDSのタンパク質に対する結合は均一性が高いと言われており、1gのタンパク質に対して約1.4gのSDSが結合します。

SDSは、サンプルと混ぜるサンプルバッファー、タンパク質を泳動させるゲル、電気泳動槽を満たすランニングバッファーに使用されます。

また、多くのタンパク質は、アルカリ条件下で負の電荷を持ちます。SDS-PAGEのランニングバッファーはアルカリ性で、ランニングバッファーによってもタンパク質を負にチャージさせています。

まとめると、SDSとアルカリ条件によって、タンパク質固有の多様な電荷を負に統一することができます

タンパク質の構造を壊す

次の問題はタンパク質の形状(立体構造)です。

立体構造を持つタンパク質のほとんどは、ジスルフィド(S-S)結合によって構造を形成しています。この構造が維持されたままの場合、分子量(アミノ酸分子の総和)に従って移動されません。

出典:Antec Scientifc, Disulfide Bond Reduction in Proteins & Biopharmaceuticals.

そこで、還元剤を使用します。2-メルカプトエタノールかDTT(ジチオスレイトール)がよく使用されます。還元剤は、タンパク質のジスルフィド結合を切断する作用があり、タンパク質を線状にします。

SDSと還元剤で処理されたタンパク質は、タンパク質固有の電荷と構造がなくなり、幅18オングストロームの線状分子となり、タンパク質の長さが長いほど分子量が大きいと言えるようになります。

その他成分の意味

グリセロール:サンプルバッファーに含まれます。タンパク質をゲルのウェルに沈める重みづけ目的で使用します。

ブロモフェノールブルー(BPB):色素です。タンパク質よりも分子量が小さいため、電気泳動中に電気泳動の先端の位置がわかります。ブロモフェノールブルーの位置を見ることで、どの程度電気泳動が進んだか目視で確認できます。

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参考文献

Nick Oswald(2016)How SDS-PAGE Works, BiteSizeBio.

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