ナカライテスク株式会社と株式会社幹細胞&デバイス研究所(以下「SCAD」)は、ヒト生体の機能を模倣する細胞デバイスとそれに関連した試薬および機器・機材等の開発・製造・販売に関する戦略的業務提携を行うことを合意しました。
また、本戦略的業務提携に伴い、ナカライテスクはSCADの第三者割当増資を引き受け、同社に対する出資を行いました。
以下はプレスリリースの内容です。
戦略的提携の背景
医薬品開発では、臨床開発に進んだ新薬候補の有効性の不足や予期せぬ毒性の発現による開発中止リスクがいまだ大きな問題となっています。
近年、培養細胞を用いてヒト生体を模倣したOrgan-on-a-chipやMicrophysiological System等と呼ばれる細胞デバイスが、新薬候補の有効性や毒性を効率的に予見する新たな手法として注目を集めており、その活用は、医薬品業界のみならず、農薬、化粧品等の幅広い業界に広がっています。
SCADは、これまでに、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞や神経細胞等の培養細胞を用いた独自の細胞デバイスの開発を行ってきました。SCADの細胞デバイスは生体組織の構造を模した3次元培養を可能にし、長期間の安定培養や機能的成熟化を促進するという特徴を持ちます。さらに、SCADは、いまだ有効な治療法がない神経難病であるシャルコー・マリー・トゥース病(*)患者の血液を用いてiPS細胞株を自ら樹立し、iPS細胞から再分化させた神経系細胞を用いた疾患モデル細胞デバイスを開発する等の取り組みも進めています。これらの細胞デバイスは、新薬候補の有効性や毒性評価への活用が期待されます。
一方、ナカライテスクは、試薬メーカー、輸入商社かつ販売代理店であるという機能を活かして、生命科学研究で利用される試験研究用試薬、機器・機材を中心とする製品と技術を、国内外の数多くの企業および大学等の研究機関に提供してきました。対象の研究分野は、iPS細胞関連研究から再生医療・幹細胞研究、創薬研究、がん研究、神経科学分野、免疫学分野等と幅広く、細胞培養、核酸抽出・精製、タンパク質発現・精製、電気泳動、ウエスタンブロッティング、免疫組織染色、有機合成、クロマトグラフィー等の多様な実験手法に対応しています。
*シャルコー・マリー・トゥース病は、手足の運動と感覚が徐々に障害されていく進行性の神経難病です。遺伝性の末梢神経疾患の 中で最も患者数が多く、全世界の患者数は 280 万人に達すると推定されていますが、有効性が証明された治療薬はまだ無く、一刻も早い治療法開発が望まれています。
戦略的提携の目的
今回の業務提携により、今後、ナカライテスクとSCADは、ナカライテスクが保有する試薬・培地等の開発・製造の機能と販売網を活用して、SCADが研究開発を進める高機能性の細胞デバイスの生命科学分野における応用展開を協力して進めて参ります。
原材料の調達、細胞培養や試験法に関する共同研究開発、顧客に対する製品と技術のプロモーション・販売等を通じて両者が互いの強みを活かして協力することで、生命科学に関する学術研究から医薬品、農薬、化粧品等の開発を含む幅広い分野へのソリューション提供を目指します。
ナカライテスクとSCADは、ともに健康社会の推進に貢献すべく、先進的な細胞関連製品および技術の開発と提供に取り組んで参ります。
ナカライテスクについて
ナカライテスクは1846年創業の和漢薬業から始まり、現在ではリサーチケミカル(試験研究用試薬)、ファインケミカル(化成品)、関連機器・機材を中心に、次代の科学を支える製品と技術提供を行っています。国内最大級の試薬・機材掲載数を誇る研究支援オンラインカタログe-Nacalai Search Versionの提供等も通じ、医療や生命科学、エネルギー、材料工学、エレクトロニクスなどの幅広い分野の研究者や技術者の支援に取り組んでいます。
幹細胞&デバイス研究所(SCAD)について
SCADは、細胞関連技術とマイクロエンジニアリングに強みを持つ京都大学発のベンチャー企業です。国家戦略特別区域法に基づく認定の下、ヒト血液由来の原料を用いたiPS細胞から病態を再現した疾患モデル細胞を作成し、創薬探索などに事業応用することが、血液法による規制の特例措置として認められた企業です。疾患iPS細胞株の樹立、配向性ファイバーの足場を用いた3次元培養技術、筋収縮や神経の電気活動に関する評価技術等のコア技術を用いて、製薬企業や大学等とのコラボレーションを進めています。
参考文献
ナカライテスク:ナカライテスク株式会社と株式会社幹細胞&デバイス研究所の戦略的業務提携に関するお知らせ, 2020年7月15日.
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