更新日:2020年1月17日
ウエスタンブロットとは?:Western blot(WB)
ウエスタンブロット(Western blot;WB)は、細胞や組織中のタンパク質を特異的に検出する抗体を用いた実験手法です。
抗体は、特定のタンパク質の配列に結合する能力を持っています。この抗体の特性を利用し、ウエスタンブロットでは多くの異なるタンパク質を含むサンプルの中からターゲットタンパク質を特異的に検出します。サンプルに含まれるターゲットタンパク質の量が多ければ、それに応じて得られるシグナル値も高くなるので、ある程度は定量も可能です。
ウエスタンブロットは、代表的なタンパク質電気泳動法であるSDS-PAGE(Sodium dodecyl sulfate-Polyacrylamide gel electrophoresis)から始まります。ポリアクリルアミドゲルの網目構造を利用し、ゲル中でサンプルを移動させることで、サンプル中のタンパク質をその大きさに基づいて分離します。
次に、タンパク質をポリアクリルアミドゲルからブロッティングメンブレンと呼ばれる膜に移動させます(転写)。タンパク質をメンブレンに転写した後、ターゲットタンパク質に対応する一次抗体を反応させます。次に、ペルオキダーゼ(Peroxidase;POD;HRP)やアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase;AP)が標識された二次抗体を一次抗体に反応させ、最後に標識であるペルオキダーゼかアルカリホスファターゼを基質によって発光させて検出します。
今回は、ペルオキダーゼ(Peroxidase;POD;HRP)を発光させる基質を感度別に紹介します。
化学発光試薬(基質)とは?
化学発光試薬は、ペルオキダーゼ(peroxidase; POD; HRP)を発光させるルミノール反応を利用した試薬です。ウエスタンブロットではペルオキダーゼ標識された抗体の検出に使用されます。ECL(Enhanced Chemiluminescence)試薬とも呼ばれます。
なぜ化学発光試薬はたくさんあるのか?
ウエスタンブロット用化学発光試薬は試薬メーカーが複数種類販売しています。ひとつの試薬メーカーが複数の発光試薬を販売する主な理由は、実験系によって適切な発光試薬の感度が異なるからです。
サンプル中の微量タンパク質を検出する場合、低感度の発光試薬を使うと露光時間(Exposure Time)を長く取っても検出できないことがあります。反対に、感度がさほどいらない実験系の場合、高感度の発光試薬を使うとシグナルが強すぎたりバックグラウンドが高くなります。
サンプル量や抗体濃度、ブロッキング試薬を変えることでウエスタンブロットの感度とバックグラウンドの高低をコントロールすることはできますが、サンプルごとに実験系が変わると混乱の原因になります。化学発光試薬の感度を正しく理解していれば、実験系は大きく変えずに発光試薬を変えるだけで検出感度をコントロールできます。
感度別に分類する
各試薬メーカーから販売されている化学発光試薬を感度の観点で分類しました。各社の製品紹介ページと私の使用経験に基づいて分類しています。
価格を比較しやすいように、容量はなるべく1,000cm2(ミニゲル約10枚分)を例示しています。
超高感度域
品名 | コードNo. | メーカー | 容量 | 価格 |
---|---|---|---|---|
SuperSignal West Femto | 34095 | Thermo Fisher | 1,000cm2 | 75,300円 |
ECL Select | RPN2235 | GEヘルスケア | 1,000cm2 | 50,500円 |
ImmunoStar LD | 292-69903 | 富士フイルム和光純薬 | 1,000cm2 | 30,000円 |
高感度域
品名 | コードNo. | メーカー | 容量 | 価格 |
---|---|---|---|---|
SuperSignal™ West Dura | 34075 | Thermo Fisher | 1,000cm2 | 72,100円 |
Amersham ECL Prime | RPN2232 | GEヘルスケア | 1,000cm2 | 35,800円 |
ImmunoStar Zeta | 297-72403 | 富士フイルム和光純薬 | 1,000cm2 | 30,000円 |
Chemi-Lumi One Ultra | 11644-40 | ナカライテスク | 1,000cm2 | 49,000円 |
中感度域
品名 | コードNo. | メーカー | 容量 | 価格 |
---|---|---|---|---|
SuperSignal™ West Pico PLUS | 34577 | Thermo Fisher | 2,000cm2 | 38,700円 |
Pierce™ ECL Plus | 32132 | Thermo Fisher | 1,000cm2(100mL) | 44,600円 |
ImmunoStar Reagents | 295-55201 | 富士フイルム和光純薬 | 1,000cm2 | 30,000円 |
Chemi-Lumi One Super | 02230-30 | ナカライテスク | 1,000cm2 | 29,700円 |
低感度域
品名 | コードNo. | メーカー | 容量 | 価格 |
---|---|---|---|---|
Pierce™ ECL | 32209 | Thermo Fisher | 2,000cm2(250mL) | 24,500円 |
Amersham ECL | RPN2109 | GEヘルスケア | 1,000cm2 | 11,800円 |
Chemi-Lumi One L | 07880-54 | ナカライテスク | 800cm2 | 8,000円 |
発光安定性(持続性)も重要
ウエスブロット用化学発光試薬は、ペルオキダーゼ標識抗体と反応させてから1-2分後に発光強度のピークに到達します。その後の発光強度は低下する一方です。そのため、画像を何枚も撮影していると、時間経過とともに露光時間を長く設定しても予想よりシグナルが低くなります。
そのような現象をなるべく避けるには、発光安定性の高さを特長としているSuperSignal™ West DuraやImmunoStar® Zetaを使うのがよいでしょう。
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