2020年8月21日の『東京大学2020年度BINDSユニット連携講習会』において、3名の先生方がタンパク質の立体構造・機能解析に関する最新の研究成果をオンライン(Zoom)で紹介されます。
実際にタンパク質の立体構造を観察することができます。参加費は無料です。
東京大学2020年度BINDSユニット連携講習会の内容
創薬やライフサイエンス研究開発を強力に推進するAMEDは「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」でBINDSを起ち上げ、永年にわたりわが国が築き上げてきた生命の源であるタンパク質の構造解析の優れた研究成果、数多くの経験や人材、夥しい機器・施設を結集して、さまざまな分野の研究者を支援して参りました。
本事業では、第一線の研究に携わる関係者が連携して、シンポジウム、ワークショップ等で最新の知見を披露してきましたが、東京大学の過去3度にわたるPCを活用した講習会はいずれも高い評価を受けております。
今回は、新型コロナウイルスの流行により、従来行ってきた対面での講習会の実施が困難となったため、新しい試みとしてオンラインでの講習会を実施します。
本講習会では、3人の講師がタンパク質の立体構造・機能解析に関する最新の研究成果を紹介します。受講者の皆様には、講演に合わせてお手元のPCで、実際にタンパク質の立体構造を観察していただく予定です。
講習会の概要
■ 日 時 : 2020年8月21日(金) 13:00〜17:20(12:45より受付開始)
■ 開 催 : Web会議システムZoomによるオンライン講習会
■ 主 催 : BINDS(創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム)の3ユニット
プラットフォーム機能最適化ユニット
構造解析ユニット
インシリコユニット
■ 共 催 : 東京大学大学院農学生命科学研究科アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット
■ 定 員 : 50名 ※先着順
■ 参加費 : 無料
講演者および世話人
■ 講演者
大嶋 篤典 (名古屋大学 細胞生理学研究センター)
寺田 透 (東京大学 大学院農学生命科学研究科)
森次 圭 (横浜市立大学 大学院生命医科学研究科)
■ 世話人
寺田 透 (東京大学 大学院農学生命科学研究科)
田之倉 優 (東京大学 大学院農学生命科学研究科)
講演内容
大嶋篤典(名古屋大学 細胞生理学研究センター)
「イネキシンギャップ結合チャネルの構造生物学」
ギャップ結合チャネルはほぼすべての多細胞生物が持つ細胞間コミュニケーションチャネルであり、隣接細胞間において細胞質同士を直接連絡することによって電気的および化学的なカップリングを実現している。
近年我々は、線虫に存在する innexin-6(INX-6) ギャップ結合チャネルの高分解能構造をクライオ電子顕微鏡で明らかにした。INX-6 のギャップ結合チャネルの構造と、ギャップ結合が外れたヘミチャネルの構造を解析し、特にヘミチャネルは可溶化状態とナノディスクに再構成された状態の構造を得ることができた。その結果、INX-6 の N 末端の構造に特徴が見られ、可溶化状態では N 末端ヘリックスがチャネルの通路内でファネルを形成してオープン構造を取っていた。一方、ナノディスク再構成を用いた脂質二重膜内では、N 末端が細胞質側に移動すると同時に、二層の密度がチャネル通路を塞ぐ形で確認された。
本講習会ではクライオ電子顕微鏡を用いた構造研究によって明らかになった INX-6 の高分解能構造と、そこから示唆される開閉機構について、実際のマップや原子モデルを扱いながら紹介する。
寺田透(東京大学 大学院農学生命科学研究科)
「膜タンパク質の分子動力学シミュレーション」
分子動力学シミュレーションを用いてタンパク質の機能を解析するためには、そのタンパク質が機能する環境を再現することが重要である。
水溶性タンパク質の場合は、タンパク質の周囲に水分子とイオンを配置し、水溶液中の環境を再現する。膜タンパク質の場合は、タンパク質を脂質二重層に埋め込み、脂質二重層の両側に水分子とイオンを配置する。
本講習会ではまず、膜タンパク質について、分子動力学シミュレーションの初期構造構築のための一般的な方法を解説する。一方、大嶋先生のグループが決定した innexin-6 のヘミチャネルは、分子量約 37 万と、巨大であることに加えて、チャネル内部にも脂質が存在しており、通常の方法では脂質二重層に埋め込んだモデルを構築することができない。
後半は、分子動力学シミュレーションを用いた、innexin-6 ヘミチャネル内部の脂質二重層のモデリングについて解説する。
森次圭(横浜市立大学 大学院生命医科学研究科)
「Motion Treeを用いた結晶構造・分子シミュレーション構造の解析」
ある種のタンパク質について調べると、結合分子・変異体・結晶形などが異なる多様な結晶構造が数多く解かれていることがある。また、近年のスパコンや GPU といった計算資源の飛躍的向上に伴い、分子シミュレーションにより生成される動的構造の数は膨大になった。
そのような多数の立体構造アンサンブルを効率的に解析する計算手法として、我々は Motion Tree を用いた解析法を提案した。残基間距離分散行列を階層的クラスタリングすることで容易に構築される Motion Tree を見れば、動的なドメインがどのくらいの振幅で運動するかが一目で理解できる。そのような動的ドメインが見つかれば、その運動方向に対して構造を分類することで、例えば薬剤の相互作用によりどのように受容体タンパク質が構造変化するかがわかる。
本講習会では、我々が最近行ったプロテインキナーゼ結晶構造の網羅的解析の結果などについて紹介するとともに、Motion Tree の計算方法や、Motion Tree の結果を活用し、通常の全体構造フィットでは見えにくいような立体構造の変化を明瞭に図示する手法について実演する。
当日のプログラム
12:45−13:00 受付
13:00-13:05 開会挨拶
13:05-13:20 講習会の進め方及び使用ソフトウェアの説明
13:20-14:40 大嶋 篤典(名古屋大学 細胞生理学研究センター)
「イネキシンギャップ結合チャネルの構造生物学」
14:40-14:50 休憩
14:50−15:40 寺田 透 (東京大学 大学院農学生命科学研究科)
「膜タンパク質の分子動力学シミュレーション」
15:40-15:50 休憩
15:50−17:10 森次 圭 (横浜市立大学 大学院生命医科学研究科)
「Motion Treeを用いた結晶構造・分子シミュレーション構造の解析」
17:10-17:20 閉会挨拶
事前登録方法
下記の必要事項を記載の上、BINDS支援オフィス(assist@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp)宛てに「講習会参加希望」と題しメールにて参加申込をお願いします。折り返し、ご案内等をお送りいたします。
※ご入力いただきました個人情報は、参加者への事務連絡、統計分析以外には使用いたしません。
『東京大学 2020年BINDSユニット連携講習会 参加登録フォーム』
■ ご氏名(ふりがな)
■ ご所属機関(大学・会社名等)
■ ご所属部署(学部・研究科・部課名等)
■ ご職名(学生の場合は学年等)
■ E-mailアドレス
■ 住所(所属機関の住所)
■ 電話番号(日中必ず連絡のとれる電話番号)
■ 今回の講習会をどこでお知りになりましたか。(複数選択可能)
□学会等のHP(学会名: ) □メーリングリスト □ポスター □チラシ
□知人からの紹介 □BINDS HP □その他( )
■ その他、ご要望・ご質問などございましたらご記入ください。
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