更新日:2020年1月18日
SDS-PAGE(タンパク質電気泳動)やウエスタンブロットでバンドに歪みなどの異常が現れたことはないでしょうか。今回はサンプルに起因する原因と対策を紹介します。
SDS-PAGEのサンプルに阻害物質が含まれている
サンプルを変えるとSDS-PAGEでバンドが歪むことがあります。 サンプルに含まれる塩、界面活性剤、変性剤、脂質の濃度が高いことが原因です。対策として、脱塩、ゲルろ過、限外ろ過、沈殿法があります。
ここでは、特別な試薬を使わず低コストな TCA(トリクロロ酢酸, Trichloroacetic Acid )沈殿法を紹介します。 California Institute of Technologyが公開しているプロトコルを日本語にし、一部追記しました。
TCA沈殿に必要な試薬とプロトコル
必要な試薬
●100w/v% トリクロロ酢酸溶液
市販品例 : 富士フイルム 和光純薬(#206-08082)
作り方 : 500gのトリクロロ酢酸を350mLの精製水に溶かします。
●アセトン
市販品例 : 富士フイルム 和光純薬(#016-00346)
TCA沈殿のプロトコル
- サンプル液量に対し、1/4量の100w/v% トリクロロ酢酸溶液をサンプルに加えます。
例 : 1.5mLチューブに1mLのサンプルを移し、そこへ250uLの100w/v% トリクロロ酢酸溶液を添加します。 - ボルテックスで混合し、4℃で10分間静置します。
- マイクロ遠心機にチューブをセットし、14,000rpmで5分間遠心します。
- 白い沈殿物を取り除かないように上清を除去します。
- 沈殿物に200uLのアセトンを加え、ボルテックスで混合します。
- マイクロ遠心機にチューブをセットし、14,000rpmで5分間遠心します。
- ステップ4-6をもう一度繰り返した後、上清を除去します。
- 沈殿物が入ったチューブをヒートブロックにセットし、95℃で加温します。アセトンが飛ぶまで加温します。加温時間の目安は5-10分間です。
補足: 沈殿物を乾燥させすぎると溶解しにくくなります。 - 沈殿物にSDS-PAGE用のサンプルバッファーを加え、ボルテックスで溶解します。
補足:1xのサンプルバッファーではなく、沈殿物が溶解しやすいように2xや4xのサンプルバッファーを加えます。また、 2-メルカプトエタノールやDTT(ジチオトレイトール, Dithiothreitol)など還元剤入りのサンプルバッファーを使用します。 - チューブをヒートブロックにセットし、95℃で10分間加温します。
- サンプルバッファーの濃度が1xになるよう精製水で希釈し、SDS-PAGE用サンプルの完成です。
TCA沈殿は、有機溶媒でタンパク質が変性する、沈殿物が再溶解しにくいなどデメリットもありますが、低コストで簡単なタンパク質精製法です。
参考文献
California Institute of Technology, TCA protein precipitation protocol.
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