バイオ実験のコツ

バイオ実験

りん酸カルシウム-トランスフェクションの原理とプロトコル

細胞への DNA のトランスフェクション(遺伝子導入)は、分子生物学において欠かせない実験手法です。最近では、脂質ベースのトランスフェクション試薬が数多く市販されていますが、効率的かつ安価な方法として、DNAとりん酸カルシウムの共沈させて細胞へトランスフェクションするりん酸カルシウム法があります。

りん酸カルシウムを用いたトランスフェクションは、接着性および非接着性細胞株に広く使用されており、(Jordanら、1996年)タンパク質の一過性発現株と安定発現株の作製どちらにも使用されます。

トランスフェクションの効率は、使用する細胞株にもよりますが、100%近く導入できることも珍しくありません。

りん酸カルシウム法の原理(Principle)

負に帯電しているプラスミドDNAと正に帯電しているりん酸カルシウムで形成された共沈物は、エンドサイトーシスを介して細胞に取り込まれます。取り込まれたプラスミドDNAは、エンドソームから脱出するか、リソソームで分解されます。エンドソームから逃れたプラスミドDNAは細胞で発現します。

必要な試薬類(Reagents)

*HEK293細胞へpEGFP-Actin plasmidを導入する例を記載しています。任意の細胞とプラスミドに置き換えてください。

  1. HEK293細胞*(例:#CRL-1573, ATCC)
  2. pEGFP-Actin plasmid* (例:#PT3265-5, Clontech )
  3. Eagle’s minimum essential medium(E-MEM)(例:#30-2003, ATCC)
  4. Fetal bovine serum (FBS) (例:#SH30088, Hyclone)
  5. 塩化カルシウム (CaCl2) (例:#038-24985, 富士フイルム和光純薬)
  6. HEPES (例:#GB10, 同仁化学 )
  7. 塩化ナトリウム (NaCl) (#192-13925, 富士フイルム和光純薬 )
  8. りん酸水素二ナトリウム (Na2HPO4) (例:#042-30055, 富士フイルム和光純薬)
  9. 2x HBS buffer (次の試薬作製を参照)
  10. Solution-A (次の試薬作製を参照)
  11. Solution-B (次の試薬作製を参照)

試薬作製(Reagents Preparation)

  1. 2x HBS buffer
    50 mM  HEPES
    280 mM 塩化ナトリウム
    1.5 mM りん酸水素二ナトリウム
    塩酸でpHを7.0に調整し、フィルター滅菌します。
  2. Solution-A(100μl)
    100 μlの2xHBS
  3. Solution-B(100μl)
    1-5 μgのDNA (e.g., pEGFP-Actin plasmid)
    12.2 μlの2 M 塩化カルシウム(フィルター滅菌済み)
    滅菌水で100μlのフィルアップし、ピペッティングで緩やかに混合します。

必要なラボウェア(Labware)

培養プレート(e.g., 35 mm dish)

プロトコル(Protocol)

  1. 10%FBSを添加したE-MEMでHEK293細胞を培養します。
  2. トランスフェクションをする24時間前に、指数増殖期の細胞を35mm dishに播種します。トランスフェクションは細胞が60-70%コンフルエントの状態になったときを推奨します。細胞によって適切な細胞密度は異なります。
  3. トランスフェクションの3時間前に培地交換をします。
  4. 100μlのSolution-Bを100μlのSolution-Aにゆっくり加え、ピペッティングに穏やかにかつ均一にしっかり混合します。
  5. 混合物が入ったチューブを20-30分間室温で静置します。
    DNA-りん酸カルシウムの共沈物が形成されている間、溶液に濁りが生じます。
  6. チューブを軽くタッピングします。混合物を細胞を培養したディッシュへ、培地液面にチップ先端を触れさせながらゆっくり添加します。
  7. ディッシュを数回傾け、DNA-りん酸カルシウムの沈殿物が培地中に均一にいきわたるようにします。
    トランスフェクションは完了です。
  8. 細胞を37℃(5% CO2)で24時間培養します。

りん酸カルシウム法の実験動画

上記プロトコルとはやや異なりますが、以下の動画でトランスフェクションの操作がわかります。

参考文献

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